みなさんは磁石ときいてどんな働き・性質をイメージするでしょうか?
多くの方は次の2つの性質をイメージするのではないでしょうか?
・金属にくっつく・金属をくっつける性質
クリップやねじなどに磁石を近づけると、吸い付けられます。
冷蔵庫にマグネットを使ってメモを挟んでいる方、多いのではないでしょうか。
・方角を示す
地図とコンパスを使って、今自分がいる位置と方角を知ることができます。
これらの現象はどうして起こるのでしょうか?
この記事では、磁石の基本的な性質についてわかりやすく説明していきます。
磁石の基本性質 N極-S極
先ほどの2つの性質、つまり「金属をくっつける」・「方角を示す」は磁石の基本的な性質に由来しています。その性質とは、磁石はどちらか一方の端がN極、そしてもう一方の端がS極と呼ばれる状態になっていることです。コンパスにしたとき、北(North)に向く方がN極、南(South)に向く方がS極です。シンプルな形状の棒磁石で見てみましょう。
2本の棒磁石をもってN極とS極を近づけると、お互いに引き合いくっつこうとします。
今度は、N極同士もしくはS極同士を近づけると、反発する力が働きます。
磁石の基本的な性質は以下の通りです。
・磁石にはN極とS極がある。
・N極とS極は引き合う。
・N極同士、S極同士は反発しあう。
磁石がコンパスになる理由 なぜN極が北を向くのか?
さきほど「コンパスにしたとき、北(North)に向く方がN極、南(South)に向く方がS極」と説明しました。なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
ここからは磁石の基本的な性質からなぜN極が北を向き、N極が南を向くのか解説していきます。
その理由は実は地球自体が一つの大きな磁石になっているのです。
どういうことか図で見てみましょう。
このとき実は地球自体の磁石は北極にある方がS極で、南極にあるのがN極になっています。
ここでさきほど磁石のN極とS極の性質を思い出してください。N極とS極は引き合い、N極同士・S極同士は反発します。
コンパスの磁石のN極は地球の磁石の北極にあるS極にひかれて北を向き、コンパスの磁石のS極は地球の磁石の南極にあるN極にひかれて南を向くというわけです。
ちなみに北極・南極に近づくほど、コンパスは正確に使えなくなります。
それは下の図のように北極点に近づくほどコンパスのN極は真下を向く方向に近づくためです。
磁石が金属をくっつける理由
なぜクリップは磁石にくっつくのか?
次は磁石が金属をくっつける性質について見てみましょう。身の回りにある金属、例えばクリップ同士はくっつきませんが、クリップは磁石にくっつきます。
また、磁石にくっついた状態のクリップにはクリップがくっつきます。そして磁石からクリップを外すと、クリップはまたバラバラになります。
このとき磁石とクリップの間ではなにが起こっているのでしょうか?
これを説明するには磁石が何からどういう風にできているかが関係しています。
磁石を細かく切っていくと
少し話を変えて磁石を半分に切ったときのことを考えてみましょう。
半分に切られた磁石はどうなるのでしょうか?
切られた面には磁力がないN極だけの磁石と、S極だけのの磁石になるのでしょうか?
実は磁石を半分にきっても切られた面には新しいN極、S極が生まれます。そして磁石は切っても切っても必ずN極S極が両方ある状態になります。片方の極だけという磁石は生まれません。
じゃあどこまで細かくしても磁石でいられるかというと…
なんと原子のレベルでもN極S極があり磁石になっているのです。原子というのは物質を構成する最小単位でこれ以上は分けられないものです。
逆に言うと、原子レベルの磁石が集まって大きな磁石ができているのです。
磁石は原子磁石の集合体
原子レベルの磁石が集まっている状態を絵にするとこのようになります。
原子レベルの磁石=原子磁石の一つ分の磁力は弱いですが、同じ方向を向いて集まることによって、大きな磁力の磁石になっているんですね。そしてN極側でもS極側でも同じように原子磁石が同じ向きで並んでいます。だからどこで切ってもN極S極がある磁石になるのです。
磁石の主成分は鉄
実は磁石の主成分は鉄なのです。磁「石」という名前からイメージしにくいですが。磁石は鉄にいろいろなものを混ぜて作られています。現在多く使用されているネオジム磁石やフェライト磁石もおおよそ60~80%は鉄でできています。
そして鉄の原子一つ一つは、さきほどいったような磁石の力をもっています。
ではなぜ、鉄はそのままでは磁石にはならないのでしょうか?
普段、鉄の原子は磁石の向きがバラバラのため、内部で磁力が打消しあってしまいます。
そのため塊全体としては磁力が発生しないのです。
これが鉄でできたクリップ同士ではくっつかないことの理由です。
クリップが磁石にくっつくときに起こっていること
クリップが磁石にくっつくときに何が起こっているのでしょうか?原子磁石に注目して見ていきましょう。最初はクリップの原子磁石の向きはばらばらです。そのため磁石とは引き合いません。
しかし少しずつクリップを近づけると、磁石の力によってクリップの中の原子磁石の向きが揃います。
磁石のS極がクリップのN極を引き付けることで向きがそろうのです。地球上でコンパスが同じ向きを向くのと同じような現象が小さな世界でも起こっているのです。
クリップの原子磁石の向きが揃うと、クリップが一時的に磁石になります。
そうすると左の磁石のS極と、磁石になったクリップのN極が引き合いくっつくというわけです。
さらに磁石にくっついている状態のクリップは自分自身も磁石になっているので、この作用が繰り返されクリップが何個もくっつく現象が起こります。
クリップ自身が磁石になっているため、
クリップにクリップがくっつく
磁石から離れたクリップは原子磁石の向きがまたばらばらに戻ります。そうすると磁石ではなくなりお互いにくっつかなくなります。
まとめ
ここまで説明した磁石の性質をまとめます。
磁石の基本的な性質は以下の通り。
・磁石にはN極とS極がある。
・N極とS極は引き合う。
・N極同士、S極同士は反発しあう。
そして地球全体が大きな磁石になっていることにより、N極が常に北を、S極が南を指すことができます。
また身の回りにある磁石は、原子磁石が同じ向きを向いた塊だということを説明しました。
ですので磁石は切っても切っても小さな磁石になります。
そして鉄が磁石にくっつくのは、近づけた磁石が鉄の原子磁石を同じ向きにそろえることで、鉄自身が磁石に変身するからでした。
以上が磁石の基本的な性質の説明です。
おわかりいただけたでしょうか。参考になれば嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
おまけ 原子磁石の回転をイメージしてみよう
身近にあるもので原子磁石の回転がイメージできる実験を紹介します。円いコイン型の磁石を2つ用意してみてください。黒板やホワイトボードに紙をとめるときに使う場面でよく使われています。
最初に2つの磁石をくっつけて極性を確認してください。この場合N極かS極かは分からない場合が多いと思いますが、どちらでもOKです。引き寄せる面が分かればいいです。
次は2つの磁石を引き離し、1つを向きを変えて置いてください。
下の絵では右の磁石の向きを変えています。
そしてゆっくりと片方の磁石(下の絵では左の磁石)を手に持って、もう片方の磁石に近づけていってください。
うまくいくと、手に持っていない方の磁石が回転し向きが直り、お互いがくっつく面を向けます。
くっつく面を向けるとすすっと磁石が吸い寄せられてきます。
ちがう方向を向いていた磁石が向きを変え、くっつく面を向けてから吸い寄せられる。先ほど説明した原子磁石の動きと同じようなふるまいです。磁石がものをくっつけるときにはミクロの世界でもこのような現象が起こっていることがなんとなくイメージできたでしょうか?
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